◎用心はしても恐れてはならない
　病気を恐れない人はほとんどいません。恐怖心は、人を苦痛から守るために神が与えられた警報装置です。しかし、それを過剰に反応させたり、誤用したりしてはなりません。必要以上の恐怖心は、困難を撃退しようという意思を萎縮させてしまいます。警戒心は、賢い恐怖心です。たとえば、自分に必要なダイエットを心得ていて、「この菓子は自分の健康に良くないからやめておこう」というような場合です。しかし、わけもなくむやみに恐れることは、病気の原因になります。そのような恐怖心は、あらゆる病気の因になる真の病原菌です。病気に対する恐怖心は、病気を促進させます。病気を思い浮かべることが、病気を呼び寄せることになるのです。いつも風をひくのを恐れていると、どんなに予防しても風をひきやすくなります。このような恐怖心によって自分の意思と神経を麻痺させてはなりません。避けようと思うあまり恐れてしまう人は自分でその恐れている状態を作りだす手助けをしているようなものです。また、病気のことや病弱な悩みばかり話題にする人と必要以上に付きあったり、彼らに同情しすぎることも良くありません。こういう話題にかかわりすぎると、知らず知らずのうちに自分の心にも不安の種をまいてしまいます。「自分も、結核や癌や心臓病で死ぬのではないか」などと恐れている人は、今すぐその恐怖心を捨てなさい。さもないと、その恐怖心がその恐れている状態を引き寄せます。すでに病気にかかっていたり、体の弱い人は、できるだけ気持ちの明るくなるような環境の中に入るように努め、力強く積極的な人と交わり、その人達の積極的な考え方や雰囲気を自分の中に取り入れるよう心がけるべきです。気の持ち方や考え方には、大きな力があります。病院で働いている人がめったに病気にかからないのは、彼らの積極的な心の姿勢によるものです。彼らは自信を持っており、その積極的な考え方とエネルギーによって活力を得ているのです。

　同様の理由で、歳を取ったらむやみに年齢のことは言わない方が良いでしょう。年齢を告げると、相手はあなたの中にその年齢を思い浮かべ、健康や活力の衰えを想像するからです。老齢を意識することは心配を生み、それによって活力を失うことにもなります。ですから、歳を取ったら年齢のことはできるだけ口にしないようにして、ときどき神にこうささやきなさい「私は不死です。私は健康に恵まれていることを感謝します」と。

　用心することと、心配することは別です。用心することは大切ですが、心配してはなりません。ときどき体内を浄化するためにダイエットをして、体内に蓄積された不純物を取り除き、病気の予防をしなさい。こうして適切な予防措置を講じたら、後は一切心配しないことです。病原菌は至る所に充満しており、心配し始めたら、人生は楽しむどころではなくなってしまいます。どんなに衛生的予防手段を講じても、家の中を顕微鏡で覗いたら、ものを食べる気もしなくなるでしょう。
 

講話三十三、目に見えない自分

　あなたがたは、ふだん肉体的存在として目に見えます。
目に見えないあなた、などと言うと奇妙に思われるかも知
れませんが、あなたがたの目に見えない本質はいろいろな
ふうに現われています。例えば、目を閉じてごらんなさい。
あなたは、自分の肉体は見えなくても、自分が存在してい
ることはわかるでしょう。何によってわかりますか？あ
なたは自分の体重を感じていますし、また、聞いたり、嗅
いだり、味わったり、触れたりすることもできます。しか
し、あなたはそれらの感覚を感じなくても、自分がいろい
ろなことを考えていると白覚するだけでも、自分が確かに
存在していることがわかります。あなたは、白分の周りに
無数の想念を回転させている目に見えない中心の核です。
では目をあけてごらんなさい。あなたは目に見えるその肉
体でしょうか？それとも、今、目を閉じて感じた内的存
でしようか？
目に見えるあなたにはさほど大きな価値はありません。
何よりも重要なのは目に見えないあなた、すなわちあなた
の魂です。睡眠中、あなたは目に見えるあなたを意識して
いませんが、それでも自分自身を意識しています。目が覚
めたとき、自分がよく眠ったかどうかわかるのもそのため
です。ですから、目に見えないあなたは本当に存在します。
その目に見えないあなたを取り去ったら、外側の目に見え
るあなたは何の意味もないものになってしまいます。目に
見えないあなたのいない肉体はただの屍で、何の価値もあ
りません。内なる目に見えないあなたこそ真のあなたです。
しかし、人はとかく、この目に見えない白分についてなか
なか考えてみようとしません。目に見える肉体郁分に対す
る関心があまりにも強すぎて、外面的容姿や感覚的楽しみ
のことばかり考えているため、立ち止まって、内なる目に、
見えない白分の存在に注意を向ける余裕がないのです。
われわれの肉体の内側には、肉眼には見えない、それと
同じ光のからだがあります。それは幽体と呼ばれ、その奥
に魂が宿っています。もし、あなたの指が、何かの理由で
一本切り取られても、あなたは依然としてその指があるよ
うに感じます。また、手足を失った人も、その感覚を知っ
ています。幽体は、肉体のすべての部分に相当する部分を
備えています。肉体心臓の背後には、目に見えない幽体心
臓があります。それがなければ、肉体心臓は働さません。
あなたは、目に見えない視覚器官、聴覚器官、脳、骨格、
神経などをもっています。光とエネルギーの細織で出来た
それらの器官が、目に見えないあなたの幽体を形成してい
るのです。幽体は光とエネルギーで出来ているため、肉体
よりもはるかに精妙に出来ていますが、それ以外は肉体と
全くそっくりです。
　もし、あなたが肉体に損傷を受けても、「白分は視覚を失
ってしまった」とか、「手をなくしてしまった」などと考え
てはなりません。あなたの見えない目や手は、まだ依然と
してあるからです。肉体の腕が麻痺しても、見えない腕ま
で麻痺したわけではありません。肉体が故障したからと言
って、見えないからだまで故障したと思い込むのは禁物で
す。そのような否定的想念は、肉体部分へ流れる知的生命
エネルギーを妨害するからです。
　電流は電線を通って流れますが、電線と電流とではどち
らが重要だと思いますか?電線は電流を流すためにあり
ますが、電流は電線のためにあるわけではありません。そ
れと同じように、肉体は、目に見えない自分である魂が使
うためにあるのであって、魂が肉体のためにあるのではあ
りません。しかし、魂がこの目に見える世界にとどまって
いるためには、肉体を一定の条件に保たなければなりませ
ん。
　こうして肉体に拘束されていることは、目に見えない自
分にとってまったく大きな足かせです。もし、肉体に縛ら
れていなければ、われわれは自由に水の上を歩いたり、空
中を飛んだりして、そのあと再び肉体に戻ってくることも
できるでしょう。目に見えない幽体の感覚能力は、それに
相応する肉体の感覚能力よりもはるかに優れています。肉
体には多くの限界があり、人間は、肉体よりもいろいろな
点で優れた能力をもつさまざまな機械を発明しました。し
かし、もしあなたが、目に見えない幽体の意識を開発すれ
ば、肉体の耳では聞こえない音を聞いたり、肉眼では見え
ないものを見ることもできるようになります。また、肉体
の感覚能力を超えたものを嗅いだり、味わったり、触った
りすることもできます。そして、さらにそれを、自分の思
いのままに大きくしたり、小さくしたりすることもできま
す−ちょうど、映画の技師が、スクリーンの映像を自由
に大きくしたり小さくしたりすることができるように−。

肉体電球に光をともす電流

　あなたは、いつも肉体という電球の世話に明け暮れてい
ますが、その電球に光をともす電流について知ることがど
んなにすばらしいことか考えたことがありますか?目に
見えるあなたは、基本的には十六種類の要素で構成されて
おり、それらは薬品店で手に入れることのできるごくあり
ふれた化学物質です。肉体としてのあなたは、材料費とし
て見れば九十セントくらいの価値しかありません。不況に
なればもっと安くなるでしょう!そんなものよりも、目
に見えない本当のあなたをもっとよく知るための努力をす
べきです。いろいろな能力や、友人や、愛をもっているの
は、この目に見えないあなたです。それが内側になければ、
目に見えるあなたはただの化学物質の塊にすぎません。
あなたの注意力のスポットライトを、目に見える有限の
あなたから内面に向け変えなさい。肉体は、背中が痛いと
か、胃が痛いとか、始終泣いたりわめいたりして年ととも
に老化するやっかいな動物です。目に見えるあなたは、ち
ょりと高い所から落ちても致命傷を受けたり、とげが刺さ
っただけでも震えあがったりしますが、目に見えないあな
たは何物にも害されません。いつも自由で、どんな肉体的
障害をも取り除くことができます。目に見えるあなたの内
側にある、目に見えないあなたこそ本当のあなたなのです。
　「万物の内部に遍満しているものこそ永遠不減である。何
物もこの不変不滅の霊を破壊することはできない」（バガヴ
ァツド・ギーター2・17)
あなたがたは自分の肉体を自分だと思っていますが、そ
うではありません。一かけらの氷が溶けると水になり、さ
らに蒸発すると消えてしまいますが、この過程は逆行させ
ることもできます。すなわち、水蒸気を凝縮すれば水にな
り、さらにそれを冷却すれば氷になります。普通の人は、
自分の肉体の原子をそれと同じように変形させるすべを知
りませんが、イエスはそれが可能なことを実証して見せま
した。

人体は神の三十五種類の観念で出来ている

　十六種類の物質要素で出来ているあなたの肉体は、目に
見えないあなたの影にすぎません。その目に見えないあな
たは、電気的エネルギーで出来た幽体と、観念で出来た観
念体とをもっています。光の幽体は十九種類の要素で構成
されており、目に見えない観念体は三十五種類の観念で構
成されています。そして、その中の十九種類の観念が幽体
の十九種類の要素をつくり、残りの十六種類の観念が肉体
（以降続く）