おでんを取って先に食べる。「む・むちゃくちゃうまい」今までで最高のおでん だ。辛子とみそがあるが、みその味がベリグー。
うどんは結構多い。しかも温かい麺だ。ふつうは「しょうゆ」を頼んだら冷たい のが出てくるのだが・・・何故なら温かい麺が空気に触れると1分でもだれてまずくなるからだ。目の前におばちゃんが、しょうゆと味の素とポン 酢(しょうゆの入っていない黄色い奴)を置いてくれた。 うどんはつやつやしていて細麺だ。いかにもおいしそう。 食べてみると見たとおりすばらしい麺。宮武・山内・あたりやとは違う種類の麺 で、細いのにコシがあって全然だれてこない。こりゃかなわんわ。
この店の主人は雑誌などの取材が来ても「これ以上来たら困る」と言うことで載せていないそうだからかなりの穴場と言える。夫婦2人でやってるし、全 席カウンターだし儲けよりも趣味でやっている感じ。だからおいしい。
ちなみにこの店を知ったのは「恐るべき讃岐うどんの」ホームページを見て知った。本には主人の意向で載せられなかったそうだが、「インターネットで
みて行く奴なんか7人しかおらんわ」と言うことで公表している。俺のランキングでは上位に選ばれた。
観音寺にある製粉所に連絡をして工場の見学とうどんを作るコツを教えてもらった。さすがに製粉会社の社長だけあっていろいろ教えてくれる。うどん屋 さんに聞いたら一番重要なこと簡単には教えてくれない。
社長は機械をいっさい使わずにうどんをやっている店は5、6軒しかないと言っていた。水と粉を混ぜるのには非常に手間がかかるので、その部分がほと んど機械だそうだ。今の練習では機械を入れることは出来ないが、店が出来るときに考えてみよう。
にしても、うどん屋やってる人でここまでする奴、俺のほかにおるんやろか。ほんまおもろいやっちゃ。
12時20分に店に入った。さすが12時台だけあって8人ぐらい客がいた。「釜あげください」と言うとおばちゃんは「今上がったとこなんよ」と言 い、しばらくして「湯だめでかまん?」と言ってきた。しかたなく湯だめにした。普通なら何分かかりますけどいいですか?と聞いてくるはずなのに「食べられ ればなんでもええんじゃ」という姿勢が見えた。
おでんの牛すじ肉を取る。なんだか油が少なくて肉の薄っぺらいのが何層にも重なっているような感じ。まるですじ肉と言うよりもバラ肉みたい。辛子を 置いているところにハウスのねり辛子が置いてある。自家製じゃないのか・・・・だがその反対側におでん味噌の入った瓶があったので喜んで味噌をすくうとサ ラサラしていて取りにくい。それを何とかして少しすくって皿に載せる。すじ肉を食べるとやはりバラ肉みたい。味噌は水みたい。「とるとこないじゃん」
湯だめが来て箸で摘むと切れた・・・・一口食べると僅かなコシがあった。上げたてだったのが唯一の救いだったろう。後10分遅く来ていればコシゼロ だな。だしはどちらかと言えば効いていなく醤油味。ニラまれると怖そうなおばちゃんだったのでしかたなく全部食べる。
「おばちゃんおかんじょー」、「500円です」ぎょえ
家に帰って最初にいだいていた不安は解消した。「あんなまずいの出してもつぶれないのかぁ。」
自分の作っている麺はだんだん完成度が高くなってきている。塩度を測定する器具も手に入れて正確な塩度管理も始めた。今日は湿度が低かったので水を
少し多くしたら麺がくっついて少しほぐれにくい。明日は水を足さないようにしてみよう。
![]() |
![]() |
うどんを作っている姿。麺を持った状態を撮ろうと思ったがシャッ ターの方が早かった。 | 今晩の晩飯。ネギトロ山かけ丼とポテトサラダとひじきの煮物だ。 全部自家製。しかもうまい。料理が趣味だと一人暮らしも全然心配はない。 |
時間は午後1時過ぎ、普通のうどん屋さんなら客は引けてるはずだがここだけは例外。広い広い駐車場があるのに店の周りは違法駐車であふれている。田 んぼだらけのこの道にこれほど道ばたに車があふれているのを見るのは、田舎の運動会以来だ。建物は数十年経った家を改造して作った感じ、国道沿いに並んで いるうどん店の内装とは比較にならないほど庶民的だ。
カウンターに座ると「今じゅんばんやから、そこのかみかいとってな」と、言ってたのでカウンターのメモ用紙に「永木 ひやあつ大」と書いてカウン ター席に戻った。
カウンターに座ったのは当然厨房の中をみれるからだ。大将は農協組合かどこかの薄緑の帽子をかぶっている。まるで市場の人みたい。包丁もって延ばし た麺を切っている。俺の持っている機械包丁を使わずに普通のまな板と包丁で駒板を使わない手駒で切る。包丁とまな板はものすごい年期だ。まな板はすり減っ てU字に溝が出来ている。包丁はその溝に合わせてまるで中国人の剣のように丸くなっている。当然ながら見事なリズム感での手さばきに見とれてしまう。
ひやあつが出てきた。「ひやあつ」は冷たい麺に熱いだしをかけた物。他には「あつあつ」と「ひやひや」と「しょうゆうどん」がある。「あつあつ」は 「あついうどんにあついだし」をかける要はかけうどん。「ひやひや」は「冷たいうどんに冷たいだし」をかける。冷たいかけうどんというわけだ。すると俺の 頼んだのは言い方を替えれば、なまぬるいかけうどんと言うことになる。
うどんは黄色くて、ちじれている。いかにもうまそう。一口食べると「俺や普通のうどん店のつくったうどんとは全く違う作り方をしているんじゃないの か?」というほどの違いがある。明らかに粉から違うな。コシもあり味も強い。こんなうどんを食べられるのは香川では3軒しか知らない。まさに讃岐うどんの 中の讃岐うどんだ。
勘定をしに行くとレジは置いていない。「ひやあつ大とエビのかき揚げ」と言うと遠くで大将が「440円」と言った。目の前に何人かいるおばちゃんは 値段知らんのやろか・・・・
あまりに忙しそうだったので修行の話はしなかった。3時頃行かないと話せそうにないな。
善通寺の山下うどん
へ修行の申し込みのつもりで行った。客と大将が話をしていたのでその間「しょうゆうどん」を頼んで食べた。表面はちじれていて噛むと強いコシがある。でも
あまり大したこと無いと感じた。それは昨日「宮武」で食べたからだ。レベル的には明らかにふつうの讃岐うどん店をはねのけるが、「宮武」はそれだけ特別な
存在ということか。時間が午後4時すぎというのも関係しているだろうな。お勘定を払ってもやもやした気分のまま店を後にした。また昼前のおいしい時間帯に
行ってみるべきだろう。
![]() |
|
アメリカンテイスティーやなぁ |
だが今朝から都市ガスが止まったままだ。坂出の送電鉄塔が倒れた事故の関係らしい。もしかしたらそこもガスが止まっていて俺のを茹でることはできな いかもしれないな。
それにしてもそこの社長に相当俺は気に入られているらしいのだ。「独学でやっちゃる」「金・手間少々かかっても自分でうまいモン作るんじゃ」の「お りゃおりゃ精神」と、手がでかいのが気に入ったようだ。変な親父じゃのう。
ともかくおかげで色々なノウハウを手に入れることが出来た。それに材料屋さんだからここから愛媛では売ってない粉を買うことが出来るしな。
行くと福岡から来てうどん屋さんを開業したばかりのTさんがやってきていた。福岡で讃岐うどんをしているが、師匠の味に追いつけないので、その原因 を突き止めるために来ているという。Tさんからも開業の話を聞けた。
社長と話をしていると、冗談なのか本当なのか、「うちの養子にならんか?」と聞いてきて孫娘の写真まで見せてくれた。孫ってまだ小学生じゃない か!!
そこは丁寧に冗談と受け止めておいて、俺が朝から仕込んで置いたうどんを打った。さすがにへたくそで、すばらしい腕前を持った社長にいろいろ教えて もらった。弟子でもないのにうれしいものだ。
帰ってからおでんを作ってみる。おでんは天ぷらと並ぶおつまみだもんな。しかし、香川のうどん店でおでんと天ぷら両方セルフで置いている店は少な い。ほとんど必ずと言っていいほど片方だけだ。両方置いたからといって客単価増えるとは限らないからな。客数増やしの為に両方置くのはいいかな。
ダイエーの牛すじ肉はいまいちだな。
朝一番の仕込みを済ませ、坂出の「明」の客入り調査に出る。客席数20程度で2人だけでやってるの繁盛店の客入り数は知っておかないとな。練習の資 料になる。店ののれんが見えるところに車を置いて、エンジンを止めて小型ラジカセのスイッチを入れる。ガソリン代がもったいない。
11時40分から2時まで調査。まるで刑事か探偵の張り込みみたいだった。結果は12時台が25人。1時台が3人だった。「意外に少なかった。月曜 日だからだろうか」
そしておしっこも我慢していたので2時に店に入って湯だめを注文した。見ると冷蔵庫らしい物から切ってある麺を取りだして茹でている。これはたった
2人で客をさばけている秘密だな。あらかじめ切ってある麺なのに、つけ汁に付けなくても食べることが出来る。見事だ。麺の幅は不均等でいかにも手切りして
いる感じだ。機械はあまり使ってない。今日はカメラ好きの友達が来ていて大将はその人と話していたが、今度話してみよう。